NHK総合テレビで19時のニュースの終わった時間帯に不定期的に放映されている『解体キングダム』という番組が面白い。
建築や土木の解体現場に潜入して、マニアックな解体技術を一般の人にも面白く、わかりやすく紐解いてくれるのであるが、我々建築の専門家が見ていても改めて考えさせられることが多々ある。
直近で放映されたテーマは『解体工事の難敵 アスベストを攻略せよ』であった。何年か前から、解体時、アスベストについてかなりうるさく規制されるようになったことは知ってはいたが、実際にここまで完全にアスベストの粉塵を周囲に出さないように解体現場を負圧密閉し、また作業する職人もアスベストを吸わないように完全防備していることを初めて知って驚いた。
調べてみると、アスベストは1975年頃から規制され始め、2012年にようやく全てのアスベスト製品が製造禁止になったようだ。番組によると、2030年頃にアスベスト建築の解体がピークになるそうで、工期とコストのかかるアスベスト除去が、建て替え事業のネックになることは容易に予想される。
経済成長期の当時はこういうことになるとは予想も出来ずに、耐火被覆などにアスベストが他に選択肢もなく使われていたのは、今となっては仕方ないことと諦めるしかないが、昨今盛んになりつつある木造建築の中高層化に伴い、木材の耐火被覆として、石膏ボード(今のところ危険な物質ではないが)が多用されたり、木材同士の接合に鉄や強力な接着剤が使用されるようになっていることなどが、何十年後かの将来、その木造建築の解体や廃材分別において何か大きな問題にならなければよいのだがと番組を見ながら考えてしまった。未来の人たちの解体技術やリサイクル方法に期待するしかないことかもしれませんが…。【Y.S】
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